日本自律訓練学会 理事長 坂入 洋右
日本自律訓練学会は、1978年に池見酉次郎先生を理事長として設立されました。その後、佐々木雄二先生、そして久保千春先生が務められ、この度第4代理事長を拝命致しました。
自律訓練法は、1932年にドイツの精神神経科医J. H. Schultzによって体系化された心理生理学的自己調整法であり、90年に及ぶ研究と実践の蓄積があります。心身医学・心療内科学における代表的な治療法として発展してきましたが、医療領域に限らず、保健・福祉・心理・教育・産業・スポーツなどの幅広い領域で活用され、ストレスマネジメントやパフォーマンス向上にも成果を上げています。
近年、社会全体がストレスフルな状況にあり、また感染症対策などを契機に人々が家庭や職場などに分断され、自分や仲間の心身の健康を守るために有効なセルフケアの方法が求められています。様々な方法が、ウェブ上でも紹介されていますが、自律訓練法は、心身のコンディションを自分で調えるスキルを身につけるための体系的な方法で、その安全性と有効性が確認されています。多くの人がそれを正しく実践して、効果を享受していただけることを願っています。たとえばスポーツ領域では、2021年だけでなく1964年の東京オリンピックでも多くの代表選手が自律訓練法を実践しており、実は本学会発足当時には、すでに多くの人々が自律訓練法を活用していました。ところが、亜流や自己流の不適切なやり方が社会に広がってしまい、自律訓練法の正しい普及と、教育及び研究の促進を目的として、本学会が設立されました。しかし、残念ながら現在でも、この目的はまだ達成できていない状況にあります。
学会員の皆様をはじめ、自律訓練法に関心をもたれた多くの方々と共に、1人でも多くの人々が、自分や家族や仲間の心身の健康を守り、コンディションを調えて能力発揮ができるように、自律訓練法の研究と教育、そして正しい普及に尽力していく所存です。皆様方のご協力を、どうかよろしくお願い申し上げます。